寺西重郎「日本型資本主義その精神の源」では、マックスウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の考え方から出発する西洋資本主義(キリスト教に根差した精神が規模の経済性をもって、工場生産技術の発展をもたらし、産業革命を経て工場制大量生産社会を発展させた)に比べ、日本では、「仏教由来の文化が市場経済適合的な規範性をもって、行動類型、すなわち資本主義の精神の深化と社会資本の蓄積をもたらし、これによる取引コストの低下が、江戸時代の商業に基礎を置く持続的な経済成長を引き起こした。」としている。海運による輸送インフラの革新が引き金となり、進化した道徳律の普及が信頼と協同のネットワークを構成し、その取引コストの引き下げ効果に基づいて、消費財の小生産者を結びつける商業中心の近代資本主義のシステムができたという。
そうだとすると、3次産業中心の現代の日本経済の再生策は、製造業中心の従来の経済政策よりも、古くからの日本型資本主義の伝統を改めて見直すところから始まるのではないかという気がしました。