Desired ratio of
BURDEN AND BENEFIT.
【課題4】
なぜ行政改革がつづけられているのか、行政改革は何のために行われるべきか
例えば、日本では1985年以後2018年の今日に至るまでの30年以上の間、全国の都道府県(たぶん東京以外の46道府県)や現在1718に減ったほとんど全ての市町村で、毎年のように行政改革が進められるよう政府が誘導している。その計画のほとんどは、本来の行革の趣旨である社会構造等の変化に合わせて行政体制や事業を再整備していくというよりは、ただ単に職員や事業を削っていくというマイナスの行革が大宗を占めたものである。この結果何が起こっているかというと、30年以上毎年、国民経済計算、都道府県民経済計算の支出面の20%を占める政府支出が減らされたり、伸びを抑えられたりしてきたということだ。また、高齢化に伴って当然増えるのが当たり前の社会保障費に対して十分な手当てをせず、逆に税金を減らして支出を抑えるようなことをやって来ている。このため、国民経済に直接的に大きなマイナス効果をあたえるとともに、所得の少ない高齢者はますます消費を抑え込まざるを得ず、若年層も将来に不安を感じ、消費に回すべき分を貯蓄や保険に回すなどしてマイナスをさらに上乗せしているのではないか。
企業が内部留保に励み、投資や賃金にあまりお金を使わないこととともに、これでは日本の経済が良くならないのは当然だと思われる。いわば日本はこの30年以上の間、下手するとこのままでは今後もずっと、自らの首を絞めながら活動していくことになるのではないか。
時代の変化に合わせた行政改革は当然必要である。しかしそれは何が何でも減らせばいいというものではない。まさしく公共福祉の向上のため、その基盤となる経済の活性化や住民福祉の向上に向かって行政が適切に執行されるように改革していくのが本来の行革ではないだろうか。やむを得ず減らす必要があるときには、3〜5年の短期集中でやるべきで、30年も続けるのは愚の骨頂ともいうべきことだと思う。なぜ誰も警告しないのか不思議だ。また仮に減らせばそのマイナスの効果をいかに補うかを常に考慮する必要がある。今でも行革とは減らすことだと考えて疑わない人たちや政党がいるということは誠に信じられない出来事である。また何が何でも行政よりも民間の方が効率的でいい事業ができるのだと盲信している人が多いのは誠に困ったことだ。
私は自らが公務員だったことである種のひがみもあるのかもしれないが、あるい公務員だったからこそ行政というものがどういうものかということについて、非公務員の人たちとは違った価値観をもっているために、先のような言葉を聞くと、「この人は何もわかっていない」と考えてしまう。先進国の中で今でも公務員を減らし続けているのは日本だけだ。単なる経費削減は地域経済や国家経済にとってプラスに働くのではなく、
むしろマイナスに働くということが分かっていないとしか言いようがない。
ちょっと古いが、公務員数に関する国際比較のグラフ等を参考までに掲げる。このうちアメリカとイギリスの公務員数のグラフは、社会経済研究所の委託で野村総研が平成17年に行った調査報告のものである。その他フランスやドイツのものも掲載されているが、いずれも公務員数が増加している傾向をあらわしているためか、なぜかあまり喧伝されていない。
日本と違ってヨーロッパでは最近EUの中で、経済1強のドイツに対して周辺の経済状態がよくない国を中心として、さらにイギリスなども含めいわゆるEUの緊縮財政に反対する野党勢力の台頭が顕著であるようだ。ポルトガルなど反緊縮派が政権を担った国では急激な経済情勢の回復もみられるところもある。EUの中の特にユーロを採用している国では、財政金融政策に独自の対策を取りがたい状況があることの結果だといわれている。日本の地方政府がそれぞれの財政金融政策を中央政府の強力なコントロールの下に置かれていることと何やら似た状況にあるのかもしれない。日本の場合はそれが30年も続いているのが、さらに状況を悪くしているのではないかというのが私の考えである。



