リチャード・クー「『追われる国』の経済学」を読み始めました。日本の失われた20年(今では30年)の原因について、バランスシート不況だと定義した人です。当時原因について、エコノミストは、需要説、供給説など様々な説がありましたが、当時私が一番当たっているなと思ったのが、バランスシート不況説でした。10年前に大学で教え始めてからもその説で説明しています。ただし、企業が借金をしない動機としては、私は投資先がないということよりも、金融機関の露骨な貸し渋り、貸しはがしの結果、企業は金融機関からの融資よりも自らの資金をまずため込む方を選択したということにしています。信用保証協会での経験からの理由です。
それはさておき、この本では経済学者は民間部門は利益の最大化に走るという大前提から踏み出せなくて、ポストバブルの世界では債務の最小化に走る事について理解できず、人類はこれまで何回も悲惨な状況に直面してきたという。2008年を境に先進国は民間部門の貯蓄行動が劇的に変化したことを、表で示している。とくにアメリカやユーロ圏では、08年3Q前の5年間とその後直近までの民間部門(家計+非金融法人企業+金融機関)の平均資金過不足額の対GDP比が大きく伸びており、貯蓄が増大していることを示している。そして、これらの企業や家計は、自らの財務の健全性に自信がもてるようになるまで再び借金をすることはないだろうとしている。
日本では、これに加え行革と少子高齢化による需要不足が続いているわけである。さてどうしたものだろうか。どうしたものだろうか。

日本における行革、中でも地方行革は85年から今まで毎年、総務省の指導?により続いており、多くはGDPの20%を占める政府支出の増加抑制、減少という形で進められ、政府支出の6割を占める地方政府支出の抑制が地方政府支出の抑制がバランス・シート不況の影響をより深刻なものにしている。まさしく行革・バランスシート不況が日本経済の現状である。